シシドのヒトリゴト

きょうも指先に心をこめて

嫌なことをずっと考え続けるのは、傷口をいじり倒すのと同じ

子供のころ、かさぶたをはがすのが好きでした。はじっこから慎重にめくっていくあの感触。失敗すると血がにじんで、あの時の「あーあ」っていう感じもやみつきでした。大人になると、思いっきりコケることもなかなかないので、かさぶたはがしもご無沙汰です。別にいいんですけど、ちょっと寂しい気もします。

 さて、ここまでは前置き。今日は、「嫌なことを考え続けるのは、傷口をいじり倒すのと一緒」という話をしたいと思います。

 私の知り合いで、Iちゃんという子がいます。Iちゃんは、会うたびにすごくストレスを抱えていて、「嫌な上司にこんなことを言われた」とか「こんな理不尽な目にあった」と話してくれます。結構時間が経っているできごとも、現在進行形のようにはっきりと覚えている。転職も数回経験しているのですが、どこに行ってもそんな感じ。私は、(なんでIちゃんばっかり嫌な目に合うんだろうなぁ、かわいそうに)と思っていました。

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 でも、最近になって気が付いたんです。どこにいっても、Iちゃんばかり嫌な目に合うなんてこと、あるはずがない。Iちゃん自身が、嫌だったことに執着して、大事に抱えているんだ、ということに。

 Iちゃんは健康で才能があり、広い家と優しい旦那さんもいて、見方を変えればかなり羨ましい環境にいるのです。でも、Iちゃんから「こんないいことがあった」っていう話をあまり聞いたことがない。Iちゃんの心の焦点は、嫌なことばっかりに合っていて、いいことや楽しいことに合いづらいのだと思います。たぶん、Iちゃんの心のクセのようなものが、そうさせているのでしょう。

ほんとは、Iちゃんにこう言いたい。愚痴だったら、いくらでも聞いてあげる。でも、大切な自分の時間にまで、嫌なことを考えて過ごすことはないんじゃない?嫌なことをずっと考え続けるのは、せっかくできたかさぶたをはがすのと同じだよ。

 放っておけば治る傷だって、ずっといじってたらバイ菌も入るし、治るどころか悪化してしまうことがあります。それと同じで、嫌なことだってずっと考えてたら、どんどん嫌な気持ちが増殖してきます。だから、嫌なことは、ある程度周りに吐き出したら、さっぱり忘れる!無理だって思うかもしれないけど、それこそ無理にでも、頭から出て行ってもらうようにしたほうがいいのです。

私も、どうしても嫌なこと、不安なことのほうに目が行きがちなところがあります。だからこそ気を付けたい。体のかさぶたは剥がしても、心のかさぶたは剥がしません。傷にはそっと眠っておいてもらいましょう。触っても血が出なくなるころには、きっと笑って話せるようになっているはずだから。